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千葉地方裁判所 昭和60年(わ)928号 判決 1989年10月24日

主文

被告人松永伸夫を懲役一年六月に、被告人〓藤功、同安里功及び同長能一秀をいずれも懲役二年六月に、被告人原田明佳、同山本研二、同田嶋雄成及び同石坂伸一をいずれも懲役二年一〇月に、被告人金子哲夫、同遠藤康博、同保修一、同二階堂裕之、同林光茂、同島﨑康弘、同石橋博之、同〓藤広二、同奥村岳志、同安立佳一郎及び同宮原市夫をいずれも懲役三年に各処する。(以下略)

理由

(罪となるべき事実)

被告人らは、かねてから新東京国際空港の建設・二期工事の着工に反対する意思を有していたところ、同空港反対の運動を続けている三里塚芝山連合空港反対同盟(北原派)が、昭和六〇年一〇月二〇日、千葉県成田市三里塚上町所在の三里塚第一公園で、「二期工事阻止・不法収用法弾劾・東峰十字路裁判闘争勝利・動労千葉支援」等をスローガンとして掲げて開催した全国総決起集会に、うち被告人松永伸夫を除いて参加した際、二期工事の着工が切迫しているとの認識のもとに、これを阻止するためには、実力闘争が必要であると考え、被告人松永伸夫も同日にかけてのころ同様に考えていたものであるが、

第一1  被告人松永伸夫は、ほか多数の者らと共謀のうえ、兇器準備集合を企て、右共謀に基づいて、ほか多数の者らが、右一〇月二〇日午後四時一四分ごろから同日午後五時四〇分ごろまでの間、前記三里塚第一公園から同市三里塚四二番地先交差点を経て同所一七四番地先付近に至る路上及びその付近において、違法行為の制止・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長指揮下の警視庁第一機動隊等所属の多数の警察官の生命、身体及び財産に対し共同して危害を加える目的をもって、多数の火炎びん・鉄パイプ・角材・竹竿・石塊などの兇器を準備して集合した

2  被告人〓藤功、同安里功及び同長能一秀は、ほか多数の者らと共謀のうえ、同日午後四時一四分ごろから同日午後五時四〇分ごろまでの間、前記三里塚第一公園から同市三里塚四二番地先交差点を経て同所一七四番地先付近に至る路上及びその付近において、違法行為の制止・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長指揮下の警視庁第一機動隊等所属の多数の警察官の生命、身体及び財産に対し共同して危害を加える目的をもって、ほか多数の者らとともに丸太五本及び多数の鉄パイプ・角材・竹竿・棍棒・石塊などの兇器を準備して集合した

3  被告人原田明佳、同山本研二、同田嶋雄成、同石坂伸一、同金子哲夫、同遠藤康博、同〓保修一、同二階堂裕之、同林光茂、同島﨑康弘、同石橋博之、同佐藤広二、同奥村岳志、同安立佳一郎及び同宮原市夫は、ほか多数の者らと共謀のうえ、同日午後四時一四分ごろから同日午後五時四〇分ごろまでの間、前記三里塚第一公園から同市三里塚四二番地先交差点を経て同所一七四番地先付近に至る路上及びその付近において、違法行為の制止・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長指揮下の警視庁第一機動隊等所属の多数の警察官の生命、身体及び財産に対し共同して危害を加える目的をもって、ほか多数の者らとともに丸太五本及び多数の火炎びん・鉄パイプ・角材・竹竿・棍棒・石塊などの兇器を準備して集合した

第二1  被告人〓藤功、同安里功及び同長能一秀は、ほか多数の者らと共謀のうえ、同日午後四時二三分ごろから同日午後五時四〇分ごろまでの間、同市三里塚四二番地先交差点から同所一七四番地先付近に至る路上及びその付近において、前記任務に従事中の多数の警察官に対し、前記丸太を抱えて突き当り、鉄パイプ・角材・竹竿・棍棒などで突き、殴打し、多数の石塊を投げつけるなどの暴行を加え、もって右多数の警察官の職務の執行を妨害し、その際右暴行により、別紙受傷者一覧表(略)番号1ないし23記載のとおり警察官の宮川伸一郎ほか二二名に各傷害を負わせた

2  被告人原田明佳、同山本研二及び同石坂伸一は、ほか多数の者らと共謀のうえ、同日午後四時二三分ごろから同日午後五時四〇分ごろまでの間、同市三里塚四二番地先交差点から同所一七四番地先付近に至る路上及びその付近において、前記任務に従事中の多数の警察官に対し、前記丸太を抱えて突き当り、鉄パイプ・角材・竹竿・棍棒などで突き、殴打し、多数の火炎びん・石塊を投げつけるなどの暴行を加え、もって右多数の警察官の職務の執行を妨害し、その際右暴行により、別紙受傷者一覧表番号1ないし25記載のとおり警察官の宮川伸一郎ほか二四名に各傷害を負わせた

3  被告人田嶋雄成、同金子哲夫、同遠藤康博、同〓保修一、同二階堂裕之、同林光茂、同島﨑康弘、同石橋博之、同佐藤広二、同奥村岳志、同安立佳一郎及び同宮原市夫は、ほか多数の者らと共謀のうえ、同日午後四時二三分ごろから同日午後五時四〇分ごろまでの間、同市三里塚四二番地先交差点から同所一七四番地先付近に至る路上及びその付近において、前記任務に従事中の多数の警察官に対し、前記丸太を抱えて突き当り、前記鉄パイプ・角材・竹竿・棍棒などで突き、殴打し、多数の火炎びん・石塊を投げつけるなどの暴行を加え、もって、火炎びんを使用して右多数の警察官の生命、身体及び財産に危険を生じさせるとともに、これら警察官の職務の執行を妨害し、その際右暴行により、受傷者一覧表番号1ないし25記載のとおり警察官の宮川伸一郎ほか二四名に各傷害を負わせた

ものである。

(証拠の標目)(略)

(事実認定の補足説明)

弁護人は、被告人らが判示各罪につき共同正犯の責任を負うものではない旨主張しているので、前掲各証拠によって、補足して説明する。

一  まず、本件に至る経過をみるに、以下の事実を認めることができる。

本件当日の昭和六〇年一〇月二〇日に、三里塚芝山連合空港反対同盟(北原派)が、三里塚第一公園において、判示の如く全国総決起集会を開催することになっていたところ、右同盟を支援する革命的共産主義者同盟全国委員会及び共産主義者同盟(戦旗派)は、従前から、機関紙で、同集会への参加を呼び掛けるとともに集会当日に機動隊に攻撃を加えて新東京国際空港に突入するよう訴えていたうえ、当日の同集会では、まず、中核派の代表が、午後三時五〇分ごろから五五分ごろにかけて、拡声器を用いて、「本日全学連は、断固として武装し、戦後日本の労働者階級人民がかつて成し遂げることがなかった最大の武装闘争に総決起する。我々の本日の目標は成田空港への突入だ。成田空港に突入するために全学連は武装し、機動隊をせん滅する。」「第三ゲートまで機動隊を情け容赦なしに徹底的にせん滅し、機動隊の阻止線を完全に粉砕し突破して第三ゲートに向かって進撃しようではありませんか。」「すさまじい鉄の破壊力をもって機動隊の肉を裂き骨を断ち切ってこれをぶち折って勝利の血路を切り開こうではありませんか。」「ここに結集した全ての皆さんは全学連の後に続いて全ての物を武器にして立ち上がって共に勝利を勝ち取ろうではありませんか。全学連の諸君、用意はいいか。準備はできたか。全ての諸君、共に勝利を勝ち取ろうではありませんか。」などと大声で演説し、その後、戦旗派の代表も、午後四時二分ごろから六分ごろにかけて、拡声器を用いて、「わが戦旗派は、本日一〇・二〇決戦に重大な決意をもって空港に突入し、解体することを宣言します。」「ありとあらゆる武器を持って、機動隊を実際にせん滅し」「全ての革命的人民の皆さん。我が戦列とともに、第三ゲートに向かって進撃しようではありませんか。」「戦旗派は重大な決意をもって、文字通り党の存亡を賭けてこの闘いを決起することを宣言して挨拶とします。」などと演説しており、それぞれに、同派らの当日の行動として、新東京国際空港第三ゲートから同空港内に突入することを目標に、警備に従事している警察部隊に対して各種の兇器を用いて攻撃を加える計画であることを明らかにするとともに、右犯行への参加を呼び掛けた。(なお、弁護人は右演説内容が抽象的なスローガンにとどまるものであると主張するが、右に挙示した言辞は、まさに当日の行動として兇器を用いて機動隊員に攻撃を加える行動を明らかにしているものであることは言をまたない。)

その後、午後四時一〇分ごろ、石塊等の兇器を積載した車両を含む六台の車両が同公園内に侵入し、その頃から四時一四分ごろにかけて、白ヘルメットを被った多数の者が、各車両の周囲に集まって、同公園内南側や同北側で石塊や棒状の物など多数の兇器を各車両から取りおろしはじめ、四時二〇分ごろまでにかけて、次第に兇器の準備を整え、途中、四時一五分ごろには、赤ゼッケンを付け、赤ヘルメット着用のうえ、竹竿、棍棒等を携帯した数十名の者も、同公園内北側で石塊を箱に詰めるなどして準備している白ヘルメットの者らのすぐそばに待機していた。

右の白ヘルメットを被った多数の者は、午後四時二〇分ごろ、五本の丸太を抱え、鉄パイプ等を携帯した約二五名の者らを先頭にし、これに多数の鉄パイプ、角材、石塊などの兇器を携帯した二百数十名の者が続き、隊列を組んで同公園北西側正面出入口から国道二九六号線に出ると(なお、白ヘルメットの多くには前面に黒字で「中核」と記載されている)、右の赤ゼッケンを付け、赤ヘルメットを被り、竹竿、棍棒等を携帯した数十名の者(中の一人は戦旗派の旗と認められる赤旗を高く掲げている)も、同じく四時二〇分ごろ、同公園北東側出入口から脇の路地に出て、国道との交差地点に向かい、四時二一分ごろ、右の白ヘルメットを着用し五本の丸太を抱えた者らが進行するのを待った上で、その直後に合流して、一団となって三里塚十字路交差点付近へ進み、四時二二、三分ごろ、先ず、右丸太を抱えた者らが駆け足で進んで、同交差点内第三ゲート方向出口に配備中の機動隊員らに右丸太を突き当て、次いで同人等のほかこれに続く百数十名の白ヘルメット着用の者らと数十名の赤ヘルメット着用の者らが、機動隊員に対して、多数の石塊を投げつけ、鉄パイプ、角材、竹竿、棍棒などで突き、殴打するなどの暴行を加え、その間、右隊列の後方にいた白ヘルメット着用の者らが、四時二三分ごろから二四分ごろにかけて、火炎びんを同交差点付近まで運ぶと、集団中の者らが、四時二六分ごろから、午後五時少し前ごろまでの間に火炎びんを投擲して少なくとも六〇本を炎上させ、午後五時前ごろからは、同交差点と同公園の間の路上にいる者らも次々に機動隊員に対する投石等の暴行に加わり、右の暴行は同交差点内及びその付近においては午後五時三一分ごろまで続き、その後、交差点内の集団は警察部隊に追われる形で、成田松尾線道路を大袋方向に進行して同市三里塚一七四番地先の通称櫻川交差点付近に至ったが、この間も午後五時四〇分ごろまで、警察官らに対し鉄パイプ等で殴る等の暴行を加えた。

以上の経過に徴すれば、機動隊員に対する右集団の者らの所為は、前示の演説内容を具現化する形で行われていることが明らかである。

二  以上の状況の中での各被告人の罪責を順次検討する。

1  被告人〓藤功、同安里功、同長能一秀について

右被告人らは、いずれも、丸太を抱えた集団が機動隊員らに突き当たった直後に鉄パイプや角材等を持って三里塚十字路交差点に入り機動隊員らに殴りかかった白ヘルメットや赤ヘルメット着用の集団の中にあって、うち被告人〓藤功は、同交差点内三鈴駐車場寄りで、赤色のゼッケンをつけ、赤い旗のついた長さ約二メートルの竹竿(千葉地方検察庁昭和六〇年領第二四四一号符第1号の旗竿)を両手で腰に抱えて突き出すように構えながら、第三ゲート方向に配備していた機動隊員の方に走っていたところを、午後四時二五分ごろ逮捕されたものであること、被告人安里功は、赤色のゼッケンを付け、「労共闘」及び「戦旗」と文字が書かれた赤ヘルメットを被って同集団中で行動を共にしていたところを、午後四時二五分ごろ三鈴駐車場内において逮捕されたものであること、被告人長能一秀は、午後四時二三分ごろ、赤色ゼッケンをつけ「戦旗」等と書かれた赤ヘルメットを被り、同交差点内三鈴駐車場寄りで、棍棒(同領第二四六九号符号1の棒)で機動隊員の右肩を殴った直後に、その場で逮捕されたものであることがそれぞれ認められ、いずれも、前記の、午後四時二一分ごろ、三里塚第一公園脇の道路から国道二九六号線に出て、白ヘルメットを被った集団と合流し、それらの者と共に一団となって機動隊員に対して暴行を加えた赤ヘルメット着用の数十名の集団中にあって、逮捕までの間、他の者らと共に機動隊員らに暴行を加えるべく行動していたものということができ、右に至る前示の経緯をも併せ考えると、遅くとも、前記の中核派及び戦旗派の代表の演説があり、これに応じて三里塚第一公園内で兇器準備集合がなされた時点において、これらの派の者らと共に、警察官の生命、身体、財産に危害を加える目的をもって、判示の各種の兇器を準備し、これらをもって警察官らに対して暴行を加えることにつき、明示ないしは暗黙のうちに意思を相通じたうえで自らも右各行動に及んだものと認められるところであって、右三名の被告人が判示各犯行につき共同正犯としての罪責を負うことは明らかである。

2  被告人原田明佳、同山本研二、同石坂伸一について

右被告人らは、いずれも、丸太を持った集団が機動隊員らに突き当った直後に、三里塚十字路交差点内で鉄パイプ、角材等で機動隊員らに激しく暴行を加えた白ヘルメットや赤ヘルメットを各着用の集団の中にいて、「中核」と書かれた白ヘルメットを被っており、うち、被告人原田明佳は、角材(同領第二四七三号符第1号)で機動隊員のヘルメットを殴り、更に振り下ろし殴ろうとして楯に当てて、午後四時二三分ごろ逮捕されたものであること、被告人山本研二は、同交差点内において鉄パイプ(同領第二四七四号符第1号)で機動隊員に殴りかかって取り押さえられ、午後四時二四分ごろ三鈴駐車場内で逮捕されたものであること、被告人石坂伸一は、同交差点内三鈴駐車場寄りで左手に角材(同領第二四九七号符第1号)を所持していたところを午後四時二四分ごろ逮捕されたものが認められ、いずれも集団となって攻撃を加えている者らの一員として行動していたもので、右に至る前示の経緯と併せ考えると、遅くとも、前記の中核派及び戦旗派の代表の演説があり、これに応じて三里塚第一公園内で兇器準備集合がなされた時点において、警察官の生命、身体、財産に危害を加える目的をもって丸太や鉄パイプ、角材、石塊等の各種の兇器を準備し、これらで警察官らに対して暴行を加えることにつき、明示ないしは暗黙のうちに意思を相通じたうえ、公園内で兇器を準備して集合し、前記の丸太を抱えた集団に続く白ヘルメット着用の集団の中にあって、鉄パイプ或いは角材を所持して同交差点内に入り、逮捕されるまでの間他の者らと共に機動隊員らに暴行を加えるべく行動して公務執行妨害及び傷害の実行行為を分担していたものと認められるから、右被告人らが判示各犯行につき共同正犯としての罪責を負うことは明らかである。

なお、右の如く共謀のうえ兇器を準備して集合した以上、その際に自らの認識した以外の兇器が他の者により準備されていたとしても、これらをも含めて兇器準備集合の罪責を問われるべきであり、同様に右の如き暴行による公務執行妨害を共謀して犯行に及んだものであるからには、共犯者のうちの者がその暴行の手段として用いた兇器のうちの右認識外の物による公務執行妨害及びその過程で生じた傷害の結果についての罪責も免れない。

しかしながら、右三名の被告人についての公訴事実中、多数の火炎びんを使用して警察官らの生命、身体及び財産に対する危険を生じさせた火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の点については、右の兇器準備集合、公務執行妨害及び傷害の罪責とは別個に考えるべきところ、火炎びんの量自体が、二〇本入りビール瓶収納ケース数個分という状態におかれていて、容易に被告人らの目に触れる状態にあったか否かは定かでなく、そのほか、右被告人らが、火炎びんの準備されているのを知るに至ったとか、あるいは運搬されている際にその前方にいながらこれに気付いていたと認めるに足りる証拠は存しないうえ、三里塚十字路交差点付近で火炎びんの投擲が開始されたのは、右被告人らの逮捕後の午後四時二六分ごろであるから、右投擲途中で認識しえたということもできないし、そのほか、右被告人らが火炎びんが兇器として準備されてあるのを認識し、その使用を認容していたものと認めるに足る証拠も存しないから、この点についての犯罪の証明はないが、右は判示第二の公務執行妨害の罪及び宮川伸一郎ほか二四名に対する各傷害の罪と観念的競合の関係にあると認められるから、主文において特に無罪の言渡しをしない。

3  被告人田嶋雄成について

同被告人は、右2の被告人らと同様に丸太を抱えた集団が機動隊員らに突き当った直後に、三里塚十字路交差点内において、鉄パイプ、角材等で機動隊員らに激しく暴行を加えた白ヘルメット着用の集団の中にいて、「中核」と書いた白色ヘルメットを被り、鉄パイプ(同領第二四八八号符第1号)を持って、同交差点中央付近で、ほか二名と共に鉄パイプで機動隊員に殴りかかって、午後四時二五分頃逮捕されたことが認められるうえ、検察官に対する供述調書において、火炎びんの準備、使用を含めて他の者らと意思を相通じたうえで本件犯行に加担した旨を供述しており、しかも右供述には任意性の認められるところでもあって、判示各犯行につき共同正犯としての罪責を負うことは明らかである。

4  被告人金子哲夫、同遠藤康博、同〓保修一、同二階堂裕之、同林光茂、同島﨑康弘、同石橋博之、同佐藤広二、同奥村岳志、同安立佳一郎及び同宮原市夫について

被告人金子哲夫は、同交差点東側に隣接する三鈴駐車場内で、鉄パイプで機動隊員に暴行を加えていた約一〇名の集団の中にあって、鉄パイプ(同領第二五〇五号符第1号)を振り上げて機動隊員に殴りかかったところを、午後四時三〇分ごろ逮捕されたものであること、被告人遠藤康博は、午後四時三五分ごろ、同交差点付近の株式会社飯塚商事前の路上で「中核」と書いた白ヘルメットを被り、鉄パイプを携帯した約五〇名の者の中にいて、自ら携帯していた鉄パイプ(同領第二五一六号符第1号)で警察官に殴りかかり、そのヘルメットを叩いたところを逮捕されたものであること、被告人〓保修一は、鉄パイプ等を所持し、黒字で「中核」と書かれた白ヘルメットを被った一〇〇人余りの集団の中にいて、自ら所持していた鉄パイプで機動隊員に殴りかかるなどして、午後五時一三分ごろ同交差点付近のセブンイレブンの駐車場内で逮捕されたものであること、被告人二階堂裕之は、午後五時二五分ごろに、三鈴駐車場内で、白ヘルメットを被り、こもごも機動隊員に鉄パイプ等で殴り掛かっていた七、八人の集団の中にいて、午後五時三〇分ごろ、機動隊員に所携の鉄パイプ(同領第二五七一号符第1号)で殴りかかって、同所で、着用のジャンパーの右ポケットに石を一個所持していた状態で逮捕されたものあること、被告人林光茂は、午後五時三〇分ごろ、同交差点北西側の魚佐ずし前の路上で、機動隊員に所携の鉄パイプ(同領第二五七四号符第1号)を振り下ろし、更に突く暴行を加えて逮捕されたものであること、被告人島﨑康弘は、同交差点内で、機動隊員らに対して前示の犯行に及んだ白ヘルメット着用の集団が、成田松尾線道路を大袋方向へ逃走した際、同集団の中におり、午後五時四〇分ごろ、三里塚十字路交差点から大袋方向へおよそ五〇〇メートル進行した地点において、所携の鉄パイプ(同領第二六〇五号符第1号)で、右集団を追ってきた機動隊員の一人の左上腕部を殴打して逮捕されたものであること、被告人石橋博之は、午後五時三〇分ごろ、白ヘルメットを被った集団が、警察官に対して鉄パイプを振り回しながら同交差点から成田松尾線道路を大袋方向へ逃走した際、同集団と行動を共にし、午後五時半過ぎに成田市三里塚一八八番地先路上で、放水車からの放水で倒れたところを逮捕されたものであること、被告人佐藤広二は、午後五時三〇分ごろ、白ヘルメットを被った約五、六〇人の集団とともに同交差点付近にいて、同交差点の南西の林金物店の前で警察官に所携の鉄パイプ(同領第二六一一号符第1号)を振り上げ振り下ろす暴行を加えて逮捕されたものであること、被告人奥村岳志は、午後五時三〇分ごろ、同交差点から成田松尾線道路を大袋方向へ七、八〇メートル位進んだところの交差点付近で、黒字で「中核」と書かれた白ヘルメットを被り、鉄パイプ等を所持し、機動隊と対峙していた集団の中にいて、棒状の物で機動隊員に殴りかかって逮捕されたものであること、被告人安立佳一郎は、午後五時二八分ごろ、三里塚十字路交差点付近にある飯塚商事と宮崎畜産の間の路地が国道二九六号線と交わる辺りにおいて、所携の鉄パイプ(同領第二六五八号符第13号)で警察官に殴り掛かって逮捕されたものであること、被告人宮原市夫は、午後五時三〇分頃、同交差点と第一公園の間の路上で、白ヘルメットを被った集団の者らの作ったバリケードを撤去のうえ同交差点方向へ向かっていた機動隊員らに対し投石を繰り返していた白ヘルメット着用の集団の中にいたが、その後警察官に追い掛けられて逮捕されたものであること、更に、右一一名の被告人のうち被告人佐藤広二と同宮原市夫を除く九名はいずれも逮捕された当時、周辺にいた者らと同様に、黒字で「中核」と書かれた白ヘルメットを被っており、被告人佐藤広二は文字不明の白ヘルメットを、また被告人宮原市夫も文字は書かれていないが白ヘルメットを各着用していたもので、いずれも、白ヘルメットを被った中核派ないしその同調者の集団に加わっていたことが認められる。

そして、以上の状況に右に至る前示の経緯を併せ考えると、被告人金子哲夫及び同遠藤康博は、遅くとも、前記の中核派及び戦旗派の代表の演説があり、これに応じて三里塚第一公園内で兇器準備集合がなされた時点において、警察官の生命、身体、財産に危害を加える目的をもって丸太や鉄パイプ、角材、石塊等の各種の兇器を準備し、これらで警察官らに対して暴行を加えることにつき、明示ないしは暗黙のうちに意思を相通じたうえ、公園内で兇器を準備して集合し、更に、前記の丸太を抱えた集団に続いた白ヘルメットを着用の集団の中にあって、鉄パイプを所持して三里塚十字路交差点内に入り、逮捕されるまでの間、他の者らと共に機動隊員らに暴行を加えるべく行動して公務執行妨害及び傷害の実行行為を分担していたものと認められ、更に火炎びんに関しても、火炎びんは午後四時二六分ごろから同二九分ごろにかけて激しく投擲され炎上し、その後も投擲が続いて四時五九分ごろまでの間に合計で少なくとも六〇本が三里塚十字路交差点内及びその周辺で炎上しており、右被告人らは、共にこの時期、同交差点内で右事態を認識、認容し、火炎びんの使用についても黙示のうちに意思を相通じて共謀のうえ、犯行を継続していたものと認められるから、判示各犯行につき共同正犯としての罪責を負うことは明らかである。

次に、被告人〓保修一、同二階堂裕之、同林光茂、同島﨑康弘、同石橋博之、同佐藤、同奥村岳志、同安立佳一郎及び同宮原市夫についても、逮捕に至るまでの間の途中で集団に加わるに至った可能性を窺わせる事情は何ら見出せず、右に至るまでの前示の経緯を併せ考えると、遅くとも、前記の中核派及び戦旗派の代表の演説があり、これに応じて三里塚第一公園内で兇器準備集合がなされた時点において、警察官の生命、身体、財産に危害を加える目的をもって丸太や鉄パイプ、角材、石塊等の各種の兇器を準備し、これらで警察官らに対して暴行を加えることにつき、明示ないしは暗黙のうちに意思を相通じて共謀のうえ、公園内で兇器を準備して集合し、更に、右共謀に基づく共犯者らによる公務執行妨害、傷害の各犯行が行われる中で、午後四時二六分ごろから同四時五九分ごろにかけて、少なくとも合計六〇本の火炎びんが三里塚十字路交差点内及びその付近に投擲されて炎上しているのを、右の被告人らは、同交差点内及びその付近ないしその周辺に居て、火焔により十分認識したものと推認されるのに、これを眼前にしてなおも全体の集団から離脱することなくその場に留まって右集団に気勢を添え、機動隊員に圧迫を加えるのを助勢したと認められ、その後更に前示の如き所為に及んでいるのであって、してみると、同被告人らは、火炎びんの使用についても黙示のうちにその投擲している者らと意思を相通じて共謀を遂げ、そこで右火炎びんの投擲は同被告人らを含めた集団の者らの共同の加害意思の発現として継続されたものと認められるから、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の点についても共謀共同正犯の責任を免れず、結局判示各犯行につき共同正犯としての罪責を負うものである。

5  なお、以上の被告人らが他の共犯者らと意思を相通じて共謀を遂げ、その共謀に基づいて共犯者らが犯行を行い、或いは更に自らもこれと一体となって各犯行に及んだからには、その間に自らが逮捕された以後の共犯者による兇器準備集合、公務執行妨害及びこれらの際に生じた傷害の結果、更に被告人によっては、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反についても、その刑責を免れることはできないこと当然である。

6  被告人松永伸夫について

同被告人は、昭和六〇年一〇月一七日に自己の住居地とみられる千葉県内からかなり離れた神奈川県厚木市内のレンタカー会社まで赴き、玉砂利を運ぶという名目で四トントラックを四日間の約定で借受け、本件当日午後四時一七分ごろ、石塊を満載し、ほかにバール二本、ハンマー二本も積載した同車を運転して成田市三里塚二二八番地先の通称櫻川十字路付近を三里塚十字路交差点方向に走行していたこと、その場で検問中の警察官に停止を求められ、事情を聞かれたのに、ドアを閉ざしてこれに応じないほど不審な行動に及んだうえ、右時刻は、前示集団が三里塚第一公園を出た午後四時二〇分ごろに近いこと、更に右積載物から抽出した石塊と、中核派がトラックで三里塚第一公園に搬入し三里塚十字路交差点付近で投擲に用いた中の石塊とが同種のものであることが認められ、かつ、同被告人自身、第四回公判において、我々は、昨秋一〇・二〇蜂起戦をたたかった旨意見陳述していて本件との関わりを否定するものでないのに照らせば、同被告人は、弁護人主張の如き共謀に基づかない独自の判断で行動していたというものではなく、事前に、集団行進の規制等の任務に当たっている警察官の生命、身体、財産に対して共同して危害を加える目的のもとに石塊等の兇器を準備して集合する旨の共謀をしていたものであることを優に認めることができる。そして、右の如く兇器として用いられる物を準備して集合することを共謀した以上、実際に自らの認識した以外の兇器が準備されたとしても、これをも含めて兇器を準備して集合した罪が成立すること前示したところと同様である。

三  以上のほか、公訴事実では、各被告人らを通じて、そのいずれかの事実についても午後五時四八分ごろまでの間、三里塚字櫻川二四九番一先(櫻川駐車場前)に至る路上及びその付近での犯行となっているが、午後五時四〇分以降の時間及び同市三里塚一七四番地先付近から右櫻川駐車場前までの路上及びその付近については、共犯者中の者が警察官らに更に暴行を加えたとの証拠は存せず、鉄パイプ等の兇器を携帯している者らの写真はあるものの、その様子は鉄パイプ等を下げて佇立しているという状況であって、もはや警察官らに対して危害を加える意思を失っているようにみられ、そのほか証拠を検討しても犯罪の継続を認めるに至らないので、この部分については犯罪の証明がない。

四  なお、弁護人は、ビデオテープ三巻(千葉地方検察庁昭和六〇年領第二四三九号符号17、同領号符号20、同領号符号67)の証拠能力或いは証拠価値を争っているが、いずれのビデオテープについても、本件犯行及びそれに至る状況をビデオカメラの通常の操作により、その映るまま正確に記録したものであることが、各撮影者の供述により明らかになっており、この間に弁護人主張の如き撮影上の作為、編集の形跡はみられず、この点での証拠能力及び証拠価値の存在に疑問はなく、また、弁護人が右符号20のビデオテープの前半部分につき撮影対象の非現行犯性を理由として証拠能力を争う点についても、革命的共産主義者同盟全国委員会や共産主義者同盟(戦旗派)と称する団体がかねてから機関紙で本件当日に武装決起し機動隊の警備を破って新東京国際空港に突入することを鼓舞していたその記載内容などに照らせば、本件の集会に際し、その参加者のうち、右各団体の構成員及び同調者多数による、大規模な兇器準備集合・公務執行妨害等の違法行為の発生が高度の蓋然性をもって予想される状況にあったことが認められるうえ、その撮影状況も遠距離からなされていて、画像中の人物の容姿を明確に判別できない程度にとどまっているのに徴すると、現に犯罪が行われる以前であっても、集会の状況や集会参加者の行動を、犯罪が行われた場合に備えて証拠収集のためにこのような態様でビデオ機器により撮影することは許されて然るべきであって、右ビデオテープが、弁護人主張の如く集会結社の自由や個人のプライバシーを侵害する違法なものであるということはできないし、また、符号67のビデオテープについて公安情報の収集という撮影の意図、目的自体の違法性を理由として証拠能力を争う点についても、判示の犯罪が現に行われ、かつ証拠保全の必要性及び緊急性が高かった中でその状況を撮影したものであり、かかる場合にその状況をビデオ機器により撮影することが許されることは明らかであって、これが弁護人指摘のように撮影者が警視庁公安部公安総務課所属の警察官で、しかも同課の証拠収集活動の一貫として準備されていたということがあったからといって、違法として証拠能力を否定すべき性質のものとはいえない。

(弁護人らの法律上の主張に対する判断)

弁護人らは、本件につき、(1)訴因が不特定であるから、刑事訴訟法三三八条四号に該当するものとして公訴棄却の判決がなされるべきであること、(2)警察は、デモ参加者の無差別逮捕を目的として、三里塚十字路交差点付近に一〇〇〇名前後にのぼる大量の機動隊員を、デモコースを塞いでデモ参加者を同交差点内に封じ込めるように配備し、二四一名の無差別逮捕をするとともに、被逮捕者に暴行を加え、化学毒性を有し物理的威力も強力な催涙弾を大量かつ攻撃的に使用するなどして多数の負傷者を出すなど、犯罪検挙とは言い難いほどの著しい違法行為を行なっており、しかも右大量無差別逮捕は空港反対勢力の弾圧それ自体を目的とする違法なものであって、被告人らを刑事訴追する過程にかかる違法がある以上、国家は被告人らに対する処罰適格を欠き、憲法三一条、一三条、三三条、三五条、三六条等の諸規定の適用により、或いは更に刑事訴訟法三三七条ないし三三八条四号を準用して、免訴又は公訴棄却の判決がなされるべきであること、(3)検察官は、機動隊員が空港反対派の者に対して本件以前からの犯罪行為に続き、本件当日も暴行に及んで重傷者を含む約五〇〇名の負傷者を出しているのに、これらの機動隊員を起訴しておらず、こうした中での本件公訴提起は、新東京国際空港二期工事着工を控え、空港反対派に弾圧を加える意図で行われた極めて政治的な目的を有する不平等なものであって、憲法一四条違反の政治的思想信条に基づく差別起訴であり、かつ政治的弾圧目的の起訴であるから、刑事訴訟法二四八条、検察庁法四条、刑事訴訟法一条、同規則一条二項の各趣旨に違反し、結局刑事訴訟法三三八条四号に該当するから、この点からも公訴棄却の判決がなされるべきであること、(4)国家は新東京国際空港公団とともに、三里塚地域の農民の生活と生存を破壊し、周辺住民や人民に不当な不利益と多大な危険を与える違法・不当な空港建設を暴力的に強行したうえ、本件当時更に二期工事の開始策動をなしているが、右行為による土地所有権、環境権等の侵害は、憲法的秩序を否定するものであるところ、被告人らの本件各行為は、国権の発動による違法・不当行為を阻止するための緊急かつやむを得ない行為であるとともに、人民の生存と生活を破壊する国家の政策に対して抵抗する人民との一体性を持つものであって、憲法に内在する人民の抵抗権の行使として超法規的違法性阻却事由に該当し、しからずとも、被告人らの行為によって生じた被害は、農地を取り上げられることにより三里塚農民が被る被害と比較すれば大きくないから、被告人らの本件各行為は可罰的違法性を欠くもので、被告人らには無罪が言い渡されるべきであること、の各点を主張し、被告人のうちからも右(4)と同旨の主張がなされている。

そこで検討するに、まず、(1)の点については、既に公判の当初において、本件訴因は刑事訴訟法二五六条三項が要請する訴因の特定に欠けるところはない旨の裁判所の見解を示し、かつこれに基づいて審理がなされてきたものであるところ、現時点における当裁判所の判断も同様であり、この点からの公訴棄却の主張は理由がない。

次に、(2)の点について、前示のように、革命的共産主義者同盟全国委員会や共産主義者同盟(戦旗派)と称する団体がかねてから機関紙で本件当日に武装決起し機動隊の警備を破って新東京国際空港に突入することを鼓舞しており、右の各団体の機関紙の記載内容などに照らせば、本件の集会に際し、その構成員及び同調者多数による大規模な兇器準備集合・公務執行妨害等の違法行為の発生が高度の蓋然性をもって予想される状況にあったことが認められ、こうした状況の下で、警備当局が多数の機動隊員を配備し、更に放水車やガス筒発射器を用意したことが不当であるとはいえないし、その使用も、前掲証拠によって認められる本件事犯に対処するためのものとしてみるとき、その定められた用法に従ってなされたものである限り、右の事態に相応した職務執行に対する抵抗の抑止及び現行犯人逮捕のためのものとして違法とは言えず、弁護人が、その使用方法に逸脱したところがある旨主張する部分は、当該行為者について各別個に論じられるべき問題で、これ故に公務執行が全体として違法となる筋合のものではない。また、三里塚十字路交差点付近における機動隊の配備状況についても、丸太を抱えた者らを先頭とする集団が同交差点に突入する以前の午後四時二〇分ごろまでは、集団行進の参加者が同交差点に入り、届出路線どおり右折して大袋方向へ進行するのに何ら支障のない位置に配備されていたのに、その後の集団の行為に対してこれを現行犯人として逮捕するため交差点周辺に展開し、交差点内を封鎖する形になったもので、何ら違法視するいわれはなく、大量無差別逮捕を言う点についても、判示の如き多数の者による集団犯罪に対して、警察官による現行犯人逮捕がなされた場合に、それが大量であるとか、予め現行犯人逮捕の態勢を取っていたとかいうことで違法となるものではありえないし、被告人ら以外の者の中にその主張の如き態様により逮捕され或いは暴行を受けた者が含まれていたとしても、その点が被告人らに対する公訴提起手続自体の適法性に影響を与えるものではない。更に、被告人らのうちに、逮捕時及びその後において警察官から暴行を受けた旨供述する者があるが、本件審理に現れた状況からは、別途これに応じた民事、刑事上の諸手続きによる救済を求めれば足りる程度にとどまり、その故をもって、国家が処罰適格を欠くとか、憲法三一条等に違反し、公訴提起の効力が無効になるとか言えるものではない。

また、(3)の点については、機動隊員の所為中に所論の如き職務上逸脱したとみられる点が存し、かつ検察官がその捜査及び公訴提起に至っていないとしても、被告人らに対する本件公訴提起そのものが、その政治的思想信条を理由として一般の場合に比べ不当に不利益に扱われてなされたものでないことは明らかであり、そうである以上、憲法一四条に違反するものではなく、そのほか検察官の意図が政治的弾圧目的であると窺わせる事情も見出せないところである。

次に、(4)の点について、弁護人主張の如き日本国憲法が抵抗権を内在しているとの論に立っても、それは国家権力が憲法秩序に対する重大な侵害を行なって、憲法の存在自体を否認し、或いは憲法秩序をおびやかすような事態に至っているのに、これを正す実定的手段が機能しない場合のことであり、かつ立憲主義憲法秩序の回復をはかるためのものであることが必要であると考えられるのに、従前の新東京国際空港建設の事業の遂行過程及び当時のB・C滑走路建設等の第二期工事着手を準備する過程において、右の如き事態にまでたち至っていないことは明白であるとともに、被告人らの所為自体、その意図するところを暴力によって遂げようとしたものに過ぎず、このような所為をもって右にいう抵抗権の具現化とみる余地は皆無である。

更に、判示各被告人の所為の違法性が重大であるのに照らせば、空港建設により三里塚農民の被る法益侵害の程度が大きいからといって、右所為の違法性の程度が減少して可罰性を欠くに至るというものでもない。

以上の次第で、弁護人らの主張はいずれも採用できない。

(法令の適用)(以下略)

(渡邉一弘 小久保孝雄 辻川靖夫)

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